ゲームの一生

スペースチャンネル5は、新米リポーターの「うらら」を踊らせるゲームだ。最初に「モロ星人」が踊り、次に同じフレーズが流れるので、「うらら」に同じタイミングで同じ踊りをさせるようにコントローラで入力していく。ダンス教室などで、先生の踊りをそのまま繰り返す感じだ。このゲームではリズム感と記憶力が重要。しかし、リズムに厳密にタイミングを合わせなければならなかったら、さぞかしつまらないゲームになってしまうだろう。

ゲームの世界は、30分の1秒とか、60分の1秒といった単位で動いている。その中で、リズムに合わせてボタンを押しても30分の1秒のタイミングで合わなければ失敗になるということはなく、場合によっては、10分の1秒くらい遅れて押したとしても成功にするという具合に、「合った」「合っていない」というあいまいな人間の感覚にあわせているのだ。理論上は、計算上は、という議論はゲームを作るときにはあまり役にたたない。感覚的なものを見失っては、よいゲームは決してできないだろう。最後はいかに人間が快適にそのゲームをできるかどうかにかかっているのだ。

日本でロールプレイングゲームといえばこのドラゴンクエストか、ファイナルファンタジー。クラシックを思わせる心地よい音楽にのせて、中世の剣と魔法のファンタジーの世界を舞台に、物語が展開していくこのゲームはドラクエという略称で親しまれている。主人公がしゃべらないという独特のスタンスで、役割を演じるというロールプレイングの原点をかたくなに守りつづけている。

さて、シリーズ7作目となるこの作品は、プレイステーション用のソフトとなった。任天堂のソフトはロムカートリッジで提供されているが、プレイステーションではCD-ROMで提供される。CD-ROMは、カートリッジと比べて、データの読み込みに時間がかかるのが欠点だ。物語も舞台も壮大なこのゲームで、場面が変わるたびに数秒間待たされていては、ストレスがたまってしかたがない。
そこでたとえば、ある街が近づいてきたらその街のデータを読み出し、音楽を切り替える準備をする、といった具合に、常にプレイヤーの行動を予測して、データを先読みし、カートリッジのように快適なゲーム展開を実現させる工夫がなされている。なにをするかわからないプレイヤーの行動を予測してデータを先読みするのは非常に難しく、その裏には日本のゲームが世界一と呼ばれる理由の1つでもある高度な技術力がある。
何も変わらないが新しい。最新の技術を表面にださず、ひたむきな努力でプレイの快適さを追求して妥協しなかったこのゲームのスタイルは、今後発売されるすべてのゲームに、いい影響を与えることを願ってやまない。

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