day3. サッカーを観る文化

寝たというよりは、ちょっと横になったという感じだ。たった2時間が8時間にも感じられるほどの熟睡だった。
現地時間は3月4日土曜日朝7時。ホテルの1階のレストランに全員集合して朝食。パンがうまいなー。僕にはなぜかヨーロッパのパンがとてもうまく感じられる。日本のパンがまずいとは決して思わないが、全体的にやわらかすぎる気がする。ヨーロッパのパンは固くて、パサパサしている感じで、飲み込むのに大量の唾液を必要とするから、必然的に味わっていると考えるべきなのだろうか。毎日食べても飽きない気がする。夜中の機内で出されたサンドイッチだけだったので、もう腹ペコだ。ハム、チーズ、フルーツなど食べる。ジュースもコーヒーも飲む。
今日は全員で、サッカーの試合を観に行くことになっている。スペインサッカー・リーガエスパニョーラのバルセロナの試合を、本拠地バルセロナのカンプノウ・スタジアムで観ようというわけだ。試合開始はなんと夜の10時だ。一体この国はどうなっているのか。
昨日の出来事を考えると、みんなにここで会えていることすら奇跡的に思えてくる。クロイ氏はようやくパリを発つころという。今日もフランクフルト経由でスペインを目指すようだ。果たして試合に間に合うのか。

朝食を終え、カンプノウへ試合のチケットを取りに行くチームと、グエル公園に観光に行くチームに分かれる。グエル公園はホテルから歩いて1.5キロくらいのところにあった。途中の街並みが既に新鮮だ。建物と建物の境目がなく、すべてが融和している感じで見飽きない。
グエル公園は、ガウディのパトロンであったグエル氏の名前が冠せられた公園。ガウディは、未来の住宅地を構想して分譲住宅地を設計したが、 買い手が付かずに工事は中断。失敗に終わった跡をバルセロナ市が引き取ったという、なんとも微妙な世界遺産だ。小高い丘の上にある公園なので、坂を登る登る。一気に足が疲れた感じがする。

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ハトが見るバルセロナ市

開園間もない公園に入ると、入り口から様々なものがグネグネ曲がっている。公園のいたるところに、植物や動物の形状を思われる独創的な柱や空間がある。

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波を彷彿させる回廊で傾くヨシオカ氏、オカムラ氏、ヤギュウ氏

まっすぐ立っている柱のほうが少なく、すべて意図して斜めに傾いている。柱はまっすぐじゃないといけない、という固定された考え方はどこにもない。あまりに斬新で、あまりに衝撃的な情報が、次々と視覚から入ってくるので、頭が痛くなってきた。いやはや、大変な街に来てしまった。

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モザイクタイル装飾に見入るヨシオカ氏

昼からは僕だけカタルーニャ広場からバスに乗って空港へ向かう。まず昨夜機内で言われたバウチャーとやらをもらいにルフトハンザのカウンターに行く。チケット窓口の女性に相談したら、「自分でルフトハンザのカスタマーサービスに手紙を書いたら?」とか信じられないことを言うので、おいおいそれがベストな回答か?と問い詰める。すると裏から上司らしき人がでてきて、「分かった。こっちで必ずドイツに連絡とっておくから、スペインを去る日に返事を聞きにまたここに来てくれ。」と言われた。そんなこと言って、また「手紙書いたら?」とか言われては敵わんので、ルフトハンザ社内通信文の控えをもらって、カウンターを後にする。

次に手荷物検査場を通る。ここは通常、これから出発する人が利用するところだが、荷物の問い合わせ窓口が保安区域の中にあるので、事情を係員に話し、手荷物チェックを受けて通してもらう。飛行機に乗らないのにここを通るのは不思議な感じだ。腹もへったので、出発ロビーのファーストフード店でチーズ入りフォカッチャを食べる。一体どこに旅立つ気だ。フォカッチャうますぎだ。

出発ロビーから1階に降りて、手荷物の問い合わせをすると、まだドイツにあるらしい。ぜひ届いたらこのホテルに送ってくれと、ホテルの名前をなんとなくスペイン語で書く。後から確認したら、スペルは思いっきり間違っていたが、係員はそれで十分わかったらしく、まかせとけ、みたいな返事をした。また、今日はまだフランクフルトからの便があるし、夜には届くんじゃないかな、とか言われた。本当かね。

街に戻り、他のみんなと合流し、サンジョセップ市場にいく。とにかくここは商品の並べ方、飾り方がうまい。照明がいいのだ。食べ物がおいしそうに見える。バルのようなものも何軒かあったが、どこも満員で座れなさそうだった。ちょうど築地の場外市場の上に巨大な屋根が乗ったようなイメージだ。気づいたらヨシオカ氏はなぜかみかんを2キロも買っていた。買いすぎだ。彼はその陳列のあまりの素晴らしさに感動して買わざるを得なかったのだろう。

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マンダリンは1キロで89セント=125円

そのままゴシック地区を歩く。普通に武器屋があったりして驚く。アレフガルドにしかないと思っていた武器屋がこんなところに!ここなら竜王の城まで行かなくてもロトの剣が手に入るに違いない。
サンタ・マリア・デル・ピ教会(通称ピ教会)前で、明日の夜開催されるというクラシック・ギターのコンサートのチラシをもらう。曲目もスペインらしいものばかり。しかも教会の中で演奏されるとは。むむむ、これはぜひとも行かねばなるまいと、まわりに力説する。

そんなピ教会の前にある、サッカーのユニフォーム屋らしき店に、「ちょっと5分」と言って、フジワラ氏が吸い込まれていく。まぁ5分で出てくるはずもなく、店員からあれやこれや勧められている様子だ。この旅はある意味彼のために企画されたものなので、存分に買い物を楽しんでいただきたいという意見で全員一致していた。その後、お土産屋などにも入りつつ、ゴシック地区を歩く。このあたり、実に雰囲気のある建物ばかりだ。

腹も減ったので、ランブラス通りのバル「ミケル・エチャ」に入り、パエリアを食べる。ホタルイカを揚げたものとか、イベリコ豚の生ハムとか、タコのカルパッチョのようなものとか、タパス(小皿料理)とか、とにかく勝手が分からず頼みすぎた。全員で挑んだものの結局全部食いきれなかったのが悔やまれる。ビールも料理もうまい。

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頼みすぎた夕食

十分食いすぎたところでいざカンプノウ・スタジアムへ移動。スタジアムがあまりに巨大で、地下鉄の駅を出てかなり歩く。辺りはすっかり夜で午後10時。バルセロナ対デポルティボの試合。スタジアムは3階席まで人が入っていた。日本ではかつて見たことのない圧倒的な光景。それもそのはず、ここは収容人数98,700人のヨーロッパ最大の超巨大スタジアムだ。

試合開始直後、クロイ氏から電話。今バルセロナに降り立った。これからタクシーで急行するとの連絡。なんと、間に合ったのか。それから20分して外側のゲートに到着したとの連絡。速い。タクシーはきっと飛ばしすぎだ。
本来このスタジアム、一度出てしまったら再入場できないのだが、クロイ氏にチケットを渡しにいかねばならない僕は、内側のゲートの係員と身振り手振りで交渉。マイ・フレンドがこのチケットをアウトサイドで待っている。レット・ミー・ゴー、アンド・リターンだ。頼む。熱意は通じる。おおそうかそうかわかった、急いで行ってこい、となって、外側のゲートまで走る。クロイ氏にチケットを渡し、スタジアムに駆け込む。なんとか全員で試合を観戦することができた。

日本なら、ゴール裏に常にタイコ叩いて応援している人たちがいたり、歌を歌い続けていたりして、プロ野球式の応援が続き、ちょっとうるさい感じがする。しかし、この国の人は基本的には静かに観戦している。サイドチェンジがあったり、いいプレイがあったりすると、素晴らしくよい拍手をする。ゴールを外せば、ため息とともに頭をかかえて悔しがり、反則らしき行為があれば、みんな一斉にポケットからイエローカードを取り出す仕草をする。凄い数の観客が一斉に架空イエローカードを出すので、最初に見たときはおかしくて吹き出しそうになった。
当然、ゴールが決まれば、一斉に立ち上がって素晴らしく喜ぶが、すぐに席についてまた静かに観戦する。観客がサッカーを分かりすぎている。メリハリが心地よい。全員が応援することじゃなくて、サッカーを観ることを楽しんでいる。いやはや、この国でサッカーを観るのはたまらなく面白い。

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日本人から見れば常にオーバーリアクションの観客

ただ、スタジアムは禁煙ではないので、まわりが次々とタバコを吸い出し、その煙にまかれるのが非常に辛かった。それでも、その辛さを忘れさせるような異様な熱気だった。

試合が終わったのは深夜だった。周辺の道路は、歩行者天国のようになっており、もの凄い数の人が帰宅しようとしていた。最寄りの地下鉄の駅はとても入れそうになかったので、数駅先までかなりの距離を歩き、そこから乗車してホテルに戻った。
水を飲み、そのまま倒れるように寝た。荷物はまだこない。

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