day4. 分からない価値感

オカケン氏が帰国する日だ。まだ4日目なのに帰国してしまうなんて早すぎる。
朝早くホテルを出る。すっかり慣れた道を、フィゲロアに向かって走る。道沿いには、薄い紫色の花が桜のように咲いている。ジャカランダという熱帯の木らしい。緯度では松山市と同じなのに、ロサンゼルスは熱帯の植物が育ち、まるで気候が違う。
フィゲロアに着いて朝食。オカケン氏は、いつにもまして食いすぎだ。

余裕を見てフィゲロアを出発し、フリーウェイを南下。ちょっと早く着きすぎるかな、と言っていたら、なんと空港に向かう道が封鎖されていた。九州自動車道の鳥栖インターで、横断道長崎行きの道が閉鎖されているようなものだ。
インターチェンジのど真ん中なので、降りることができない。他に選択肢はなかった。一旦東向きに走り、最初の出口を降りて戻ってくるしかない。
しかし、その東向きもなぜか大渋滞。10分たってもほとんど進まない。まさかこっちも封鎖されているのではないか。不安がよぎる。もはやオカケン氏もこれまでかという感もあった。

30分くらいたっただろうか、ようやく東行きは流れ出した。しばらく行くと、路肩を無理に急いだ車の事故処理が行われていた。こいつのせいか。
トムブラッドレー国際線ターミナルに9時到着。途中の事態を考えれば奇跡的な時間だった。チェックインを終え、3階で別れの一杯。オカケン氏は、ラージサイズのペプシが小さく見えるというからすっかり病気だ。

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謎の笑みを浮かべて去り行くオカケン氏

3人になった。空港を出てすぐのガソリンスタンドに行く。アメリカはほぼ例外なくセルフサービスだが、最近は日本でも増えてきており、簡単だろうと思っていた。ところがだ。

1. 会員証を入れるところにクレジットカードを入れてしまい、カードが吸い込まれる
2. 係員を呼んでカードを救出してもらう
3. クレジットカードを正しいところに入れると、ディジットエラーと表示される
4. 係員を呼んでエラーを報告
5. そのカードは使えない、店に入ってカードを提示しろと言われる
6. 店に入り、店番にカードを渡して給油開始
7. 店に戻って料金を払う

何がセルフサービスだ。

ユニバーサルスタジオへ向かう。といってもアトラクションに乗りまくるのではなく、併設のショッピングモールが目的だ。
フジワラ氏は、古い電子野球ゲーム機と、MLBモノポリーにときめいていた。ヨシオカ氏もスターウォーズにやられていた。

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買う予定がなくても買ってしまうフジワラ氏

絞りたてジュースの店を発見し、オリジナルサイズとスモールサイズとあるところ、オリジナルサイズを頼んだ。でかい。飲んでも飲んでも減らないのだ。これが標準サイズというのは絶対に何かおかしい。オレンジ数個を一気食いしたのと等価で、はからずもこれが昼食となった。

パサデナに移動。ディスカウントストアのTARGETに向かう。ここはさすがに何も買わないだろうと思っていたら、ヨシオカ氏はフットボールを手にとって真剣に悩みだすし、フジワラ氏は旅行用のトランクケースを物色しはじめる。僕は迷いに迷っているフジワラ氏の横で、今度はバルサ見にスペイン行くし買っといて損はないとか、日本円で考えてもこれは安いとか、取っ手が一本のケースは小回りが効いて反転させやすいとか、「買わない理由」ではなく「買う理由」を挙げていったのだった。
結局、ヨシオカ氏はあきらめ、フジワラ氏は購入。理由は、みやげ物が増えたからだという。

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パサデナのターゲット

ヨシオカ氏先導でパサデナを歩く。古い建物が突然あったりして、不思議な町並みだった。日差しに向かって歩いていくので、かなり体力を消耗し、もう戻ろうよと口に出したりした。しかしヨシオカ氏はどこか目的地があるらしく、いやもう少し先まで行きましょう、とひっぱる。
MOMAショップだった。ロサンゼルスなのにMOMAショップ?と思って入ると、ニューヨークでしか買えないはずのMOMAみやげがところ狭しと置いてあった。ニューヨークにいかずとも、ニューヨークみやげが買える。ちょっと寂しい。
ヨシオカ氏のお目当てはカバ像だった。MOMAのマスコットで、名前はウィリアムというらしい。店員さんが暇なのか、次々とウィリアム関連グッズをひっぱりだしてきて、並べだす。ヨシオカ氏は、いろいろ薦められていた。
フジワラ氏はといえば、フランク・ロイド・ライトの名刺入れが気に入った様子だった。しかし、サッカー・バルセロナのロゴが入った名刺入れ持っているじゃないか、と言うと、名刺入れは2つはいらないという結論に達したようだった。
パサデナの郵便局に寄り、ユニバーサルスタジオで買った「スターウォーズ塗り絵帳」を松本サルト氏に向けて送る。封書なので、通関のための書類も書く。窓口の人がとても親切でよかった。

アルハンブラ方面に行き、プロスペクトプラザで中華。昼がオレンジジュースのみだったので、かなり注文する。うまい。うますぎる。うまい白米も出た。お茶も出た。中国の食の深さを実感した。フジワラ氏の体調もどうやら戻ったようだ。

<店情報>
Mei Long Village
301 W.Valley Blvd. Prospect, San Gabriel CA

一生かかって作る予定のゲーム3部作についてヨシオカ氏と話す。
1作目は「能」。舞(まい)と謡(うたい)と囃子(はやし)の三要素から成り、舞踊と劇の要素を内包する。
2作目は「禅」。精神を一つの対象に集中し、その真の姿を知ろうとする。
3作目は「方丈」。一丈四方、四畳半ほどの広さで、世俗を捨てた閑居生活の楽しさを語る。
まさかこんな3部作を構成するとは、勢いとは恐ろしいもので。

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貨物列車の通過を待つ夕暮れ

なんと8時にホテルに戻る。外はまだ明るいが、そろそろたっぷり寝たい。
ところで、ホテルの横のフリーウェイには、10分間に1台くらい、可能な限りボリュームを上げて、地面に低音を響かせながら走る車がいる。借りたレンタカーも低音が強すぎて、設定を変えても抑えることができなかった。
低音がドンと響くほうがいいんだ。ポテトは山盛りがいいんだ。飲み物はたっぷり飲むのがいいんだ。そういう価値感の人が多いというだけの話か。

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