時代小説

最近、時代小説が熱い。といってもきっと僕だけの話だ。
僕は会社から二駅のところに住んでいて、通勤時間は30分くらいだ。そのうち電車に乗っている時間はわずかに4分間。電車を待っている時間を入れたって、文庫本でわずか数ページしか読め進められない。

ある日、本屋で立ち読みしていたら、司馬遼太郎の時代小説を見つけた。「侍はこわい」、なんてひかれるタイトルなんだ。しかも短編集なので読みやすい。すぐ買って、次の日から読み始めた。
朝ちょっと読み、帰りにまたちょっと読む。続きはまだ次の日だ。そんな分断された状態で話がつながっていくのかと思っていたけれど、全然問題なかった。単なる文字の記憶ではなく、物語のイメージを記憶して、そこに新たな展開を加えていく能力。人間はすごい。

その後すぐに、同じ文庫シリーズの「城をとる話」も読んだ。戦国時代、1人の下級武士が、山賊、商人なんかを巻き込みながら城を落とそうとする話。人間の描き方が丁寧で、一気にひきこまれる。読み終わった後の感覚がまたなんともいえない。

スペイン旅行中には、「」を読み進めた。幕末の混乱期を、日本古来の価値観と、海外から入ってくる価値観の狭間で、「藩」というものを守ろうとする武士の話。三冊に渡るだけあって、長い旅で、壮大な作品だった。

と、読み進めてきたものの、次に何を読もうと思って止まってしまった。戦国時代や幕末の話はちょっとしばらくいいやと思ったら、途端に探すのが大変になった。さてどうしようと思っていたとき、高橋克彦の「火怨―北の燿星アテルイ」を目にした。これはなんと八世紀の話だ。これまで八世紀の日本なんて想像したこともなかった。
朝廷の大軍に立ち向い、陸奥の民を守ろうと、蝦夷(えみし)のリーダーが立ち上がる熱い長い話。読み進めると、歴史の時間に習ったあの坂上田村麻呂が出てくるではないか。なんと!そういうやつだったのかー!
教科書上の名前でしかなかった人物が、いきなり具体的な人物像となる。1ヶ月以上もかけて、少しずつ読んだせいもあってか、とても心に残る話になった。

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コメント(2)

幕末に,日本から勝手に独立して「蝦夷共和国」を宣言した元幕臣,榎本武揚が今の私のホットです.
日本の武士で「ここ,俺の国だから」と宣言できた人は,931年の平将門以来じゃないのかな.
誰か榎本の小説は書いていないのだろうか.

そんな人がいたんですか。日本もまだまだ知らないことだらけだな。
この物語を読んだ今、「蝦夷」という漢字を見ても、えみしと読んでしまいます。それだけで意識は北海道ではなくて、陸奥(みちのく)にいってしまうんですから、なんだか複雑です。

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