alva noto + ryuichi sakamoto

昨年の12月6日。初台のICCのイベント「ic uc wc」で、1時間ノイズを聞き続けるという体験をしました。
Carsten Nicolai(aka. alva noto)、坂本龍一をはじめ5人のメンバーがPCの前に座り、ただ黙々と作業をするというライブです。ライブと表現するのもどうかと思うような様子です。
机があって、パソコンが5台ある。そこに人があらわれ作業がはじまるわけですから、音がなければ、なんかの技術会議でもやっているような風景にしか見えません。いや、一言もしゃべらないのですから、会議として見ても異様です。この日、坂本龍一という名前だけ聞いて、あの美しいピアノを想像してきた人には、さぞかしショックなイベントだったと思います。

5人が同期を取りつつ、即興演奏(?)の大音量ノイズと、いくつかの音が嵐のように吹き荒れる中、何らかのパターンを見出し、そのリズムに自分の感覚をのせていきます。僕はそんな聞きかたをしていたと思います。
ある種の音楽と聞こえないこともないのですが、混沌の中に、救われるようなメロディーは決して出てきません。前にも後にも一切解説はないし、彼らは何も言わず来て、何も言わず去るのです。そこに美しさを感じました。
ずっと聞いていると、ノイズには自分の好きなパターンと、聞くというよりも耐えると表現すべき嫌いなパターンがあるということがはっきり分かりました。

ライブが終わるとめちゃくちゃ疲れていました。会場のCD販売コーナーに立ち寄ると、なんとも美しいジャケットが飛び込んできました。またやってしまいました。ジャケ買いです。疲れていたのでしょう。こんな表現をするとファンから怒られるかもしれませんが、その時は、いわゆる、わけの分からないノイズ音楽でも買ってみるかという気持ちだったのです。
帰ってよく見ると、alva noto + ryuichi sakamotoと書いてありました。2人の演奏のようです。しかし、この「insen」というアルバムには、僕の期待を裏切って、驚くほど安らぐようなピアノの音と若干のノイズが収録されていました。こういう音楽をアンビエントというのでしょうか。

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僕は、ファミコンの、ドラムをまねたようなノイズを聞いて育っているわけで、ある程度のノイズはかえって心地よい音に聞こえる耳ができているのかもしれません。まっさらなピアノ音楽より、ちょっとノイズが入っていたほうが美しいなと思うこともあります。重要なのは、その「ちょっと」の加減でしょうか。

このアルバムに収められている音楽は、極端に低い音と、極端に高い音、ノイズ、それにピアノの音で構成されています。ピアノとコンピュータのデュオという表現が適切です。パソコンに接続しているようなスピーカーでは聞こえにくい音がたくさん混じっています。

聞き慣れたピアノの音の手前側に、聞き慣れない刺激的な電子音が定期的に聞こえるわけです。リラックスしつつも、どこか緊張感が持続する。そういう感じがして心地よいのです。

海外から取り寄せていた、同じalva noto + ryuichi sakamotoのアルバム「vrioon」も、先日届きました。が、やはり「insen」のほうが僕は好きです。「ちょっと」の加減が僕にとってちょうどいいのです。Carsten Nicolai(aka. alva noto)という名の、このドイツの音楽家(であり美術家でもあるらしい)の作り出す音は、僕の心地よいと思う波長にぴったりくるようです。

今月末には新しいアルバム「revep」がリリースされます。楽しみです。

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コメント(1)

まぁ、素敵そう。

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