豊かさが招く悲劇

テロはアメリカの都合に合わせて変わる過剰な理想主義と、イスラム至上主義の対立とも読み取れる。世界は今、アメリカの正義=世界の正義ということになっている。日本は自国の正義を主張できない国の1つだ。そんな国々が「団結してテロに立ち向かう」といってもピンとこない。

テロが起こるたび、犯人を探して、その基盤を破壊しようとする。しかしそれは、殴られたから殴り返すという報復だ。ただの「仕返し」に過ぎない。仕返しのためなら暴力も許されるというのでは、何の解決にも至らない。

今回のロンドンのテロは、世界的な金融街「シティー」を狙ったものだという見方がある。「シティー」は、欧州最大の金融市場で、イギリスのGDP(国内総生産)の2割も稼ぎ出している。いわば富の象徴だ。

イスラム諸国では、かつて西欧の価値観が流入して、それまであった伝統的な社会が崩れた。同時に貧富の差も一気に広がった。
これに不満を持った人々は、質素で競争のない昔のイスラム教の世界に戻そうとする。これが「イスラム原理主義」だ。決してイスラム原理主義=悪ではない。

原理主義のほんの一部の人たちが、教育、テレビ、映画、音楽を禁止して、無理やり伝統社会に戻そうとするような過激な行動に出た。彼らは西欧化をもたらした国、およびそれを支持する国を攻撃することで、民の支持を得られると信じている。

こんな状況下では、貧富の差から来る不満を誰かにぶつけるチャンスもない。そんなことをすれば逮捕されてしまうからだ。主導者が選挙で選ばれるわけもないし、自らの不満をぶつける先はない。

貧しい若者が、かなり偏った過激な思想のもとで教育を受けて育っている。彼らは教育を受けるために学校に行っているのではない。学校に行くと、食べ物がもらえるから行くのだ。

イラクに大量破壊兵器はなかった。アルカイダに実態はあるのかどうかさえ分からない。タリバンとアルカイダのつながりはあるのだろうか。テロ組織のネットワークなんて存在するのだろうか。

たぶん、過激な教育を受けた若者が世界中に散らばっているというだけだと思っている。そして今後も増え続けるだろう。

限られた資源を奪い合い、世界総人口の2割に満たない裕福な人たちがそのほとんどを利用する。
裕福な人がさらに裕福になっていく。さらなる悲劇を招く。

テロは防げない、と言い切ったイギリスは正しい。防げないということを理解した上で、50年後の世界のために何ができるかを考えていかなくてはならない。

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